「計画保全」に出会ったのは、保全係長を拝命して間もない、1980年のことでした。当時は、予知技術を現場に定着化させる(「予知制度」と呼んだ)回転機器の委員長として、自社開発した設備診断技術を現場に適用展開し、さらに研究開発に参画・推進するという動きと並行して、全ての保全業務を「計画保全のしくみ」で運用する、日常保全、定期整備・修理、定期検査・診断はもちろん、故障対応・原因究明もMP設計も、あらゆる業務を対象とするということで、運用開始直後の山のような課題を抱え、忙しい日々を送っていました。
現場の基本整備をベースに、故障ゼロ活動、検収票の徹底運用なども含めた「計画保全」により、故障は激減し、産業事故、工事中の事故が皆無となり、保全員が毎朝のミーティングに行くと、今日もプラントは順調で計画外の仕事はありませんと、笑顔とともに事務所に戻ってきたことが、殊の外うれしいものでした。
「計画保全」のしくみを、適切に整え、周知し、
・工事におけるPDCA各段階の計画・実施内容、検収条件を明確化すること
・計画から逸脱する場合には、その都度、変更管理を行い変更内容の妥当性・適切性を複数の技術者で議論すること。この場合、プラント及び現場に精通した運転・環安・保全の技術者、必要に応じ、変更内容に関する専門技術者、などが変更管理の議論に参画すること。
・どんな些細な工事であろうとも、上記を確実に実行できる「しくみ」を作り、業務フロー・実行体制を整備し、帳票類を統一し、全員に周知し、管理者が逸脱は認めないとの覚悟をもって運用すること。
・そして、実行できる人材を育成すること。
などを推進することにより、保全組織が「修理屋集団」から「保全エンジニアリング部隊」に変身していったことを、誇らしく思い出しますし、その成果も15年間の設備故障件数1/20、生産停止率4×10-6、保全コスト1/2など、大きなものでした。
この、計画主導で保全を行う「計画保全」の整備とその確実な推進という、最も地味で当たり前の業務こそが、毎日多くの仕事に取り組む保全現場において、安全と経済性を両立させる根幹であり、唯一無二の方法であることを、筆者は強く主張し、改めて認識している次第です。
問題が発生してからの場当たり的対症療法が横行し、空中戦のやりとりで物事が決まり、その結果、明確に出来ていない部分を実行することにより、さらに問題が拡大し、長引き、損出を増大させていることが、まれにでも発生している現場があるとすれば、まさにこの「計画保全」が不十分であることの証といえます。
プラントでは、上司部下、関係先との緊密で正確な報告・指示、情報交換が事故防止の観点からも必須ですが、そうした業務フローそのものを造り込み、推進することが肝要です。
信念を持って「計画保全」を自ら推進し、部下も、上司も、社内関係部署も、協力会社・メーカーも、さらには経営をも巻き込み、お互いのPDCAを廻しましょう。
プロセスと設備が高度化・複雑化し、自動化・小人員化が進み、さらに高経年設備・部位が散在する現在、許容されるリスク内で、プラント・設備の長寿命化、高稼働率化、良品質率向上、コストダウンなどを直接的に実現できるのは、「計画保全」であり、その運営を担う「計画保全士」の皆さんです。ご活躍ください。
我が国の保全の強さは、保全技術者が日々現場に出向き、技術・技能を磨き、設備改善してきた歴史にあると思います。
しかし、時代の流れとともに、行き過ぎた欧米的なマニュアル化等で、日本の強みである人による保全力が少しづつ弱まっていると思います。計画保全は、故障削減活動等の保全現場から生まれた生きた実践的手法でり、体系的な組織活動手法でもあります。すなわち、世界の何処にもない、日本の強みを生かした優れた手法である。
「計画保全士」は、その組織活動を実践するリーダーであり、世界と戦える工場を保全力から創っていって欲しいと思いますし、その役目を担う方々と思います。
当社では「計画保全士」の有効性が理解され、保全員の1/3が現在までに受講しており、今後、保全員は必須科目と考えております。
従来、保全員=修理屋の意識の時代が長く続きましたが「計画保全士」制度(含むセミナ-受講)が出来て、保全員の発言の中に”保全=経営”であることを聞ける様になり、モチベ-ションアップが感じられます。
又、本モチベ-ションアップ継続の為、「全社保全水準評価」を約10年以上継続実施し、第2ステ-ジ(運用状況評価)に突入しております。
当社の保全水準評価の特徴は診断員が「本社+他2事業所」で構成されていることです。結果、本評価を通して診断員も刺激を受けて帰ります。これが、本評価活動が長続できた要因と考えております。
「計画保全士」は各ユ-ザ-の保全経営の舵取りを育成する資格と考えます。本倶楽部を通して「保全の同志」として有効な情報交換が出来ればありがたいと思います。
「計画保全士」の皆様は、物作りで技術立国である日本の将来を担っていることは間違いない事実であります。これからが勉強の場です!計画保全士の資格に甘んじることなく、PDCAを回し今後とも継続的な技術研鑽を期待します。
この「計画保全士マイスター倶楽部」を大いに活用して下さい。少しでもお役に立てればと思います。
伴に頑張りましょう!
計画保全で永続的に成果を享受するためのキーワードは「あるべき姿」「見える保全」「PDCAサイクル」だと思います。これは保全の仕組み作りに止まらず、設備診断についても同じことが言えます。
この基本理念を「計画保全士」がしっかり理解して、保全のリーダーとして信念を持って組織を動かすことが求められます。
保全の地位を向上させる為には、経営者に保全の成果を見える形で示し続けることが必要です。
同じ立場で頑張っている皆さんが「計画保全士マイスター倶楽部」で有機的に繋がることでお互いに成果を上げて欲しいと思います。
あまり難しく考えない方が良いかもしれません。
工場生産設備の故障や機能低下をミニマイズ化し生産性を向上させるために何をすべきなのか・・・。
先ずは機器管理台帳を作成し、それぞれの機器にあったメンテナンス体制を構築することが必要です。そのために定期検査診断・定期整備修理・自主保全活動の項目と内容を明確にし、計画的で継続的な保全活動を進める基盤作りが計画保全士の第一の仕事です。適正な設備診断技術をベースに劣化診断し予知保全体制を確立することです。
勿論、機器の履歴管理と評価結果に基づき計画の見直しや、設備機器の改善も進めて、PDCAをスパイラルに早く廻すことが基本となります。
大事なことは企業の収益性向上と保全のPDCAを両輪としての経営保全体制を早期に構築することが、計画保全士・保全の使命であり、地位向上そのものと言えます。
さあ-明日に向かって第一歩を・・
「計画保全」は世界に誇る日本の財産であると思います。
この理念と内容を理解した「計画保全士」の使命は、「計画保全」の実践をとうして、世界最強設備を創り出すことにあります。研究、開発、設計に比べて、「縁の下の力もち」や「日陰の存在」と思われがちな「保全」の真の大事さ、面白さをこの「計画保全」をとうして、「保全」の地位向上に努めていきましょう。
旭化成で生まれた「計画保全」がJIPMの活動を通じ、新たな仲間を増やし、大きく世界に羽ばたくことを期待しております。
社会インフラと同様に、設備の安定運用(操業)が求められる中で、現場で安定運用(操業)を支えている皆さんは、無くてはならない存在です。
そのためには、技術力の高く経験豊富な人材が求められます。
また、単なる技術力のみならず、保全経営のマネジメント能力も求められます。
その使命を担う存在として「計画保全士」です。
保全業務における最適最善のアンサは、多くの選択肢の1つです。
その選択肢は、自社内での保全活動からのみでなく、多くの人脈からもたらされるものも多いと判断されます。
このため、情報共有(活発な意見交換)の場として「計画保全士マイスター倶楽部」で活用されることを提案します。
私は入社以来33年間、「設備診断技術」に携わってきました。
半分は研究開発業務、半分は現場での診断業務を行ってきました。
この「設備診断技術」によって、日本の製造業における生産性の向上に活かしてもらいたい。
少しでもそのお役に立てればと思います。